石丸伸二や米山隆一への誹謗中傷とは? 「悪党」をキャンセルするための差別ならOK⁈【仲正昌樹】
「悪党」退治のためのダシとして差別される人たち
◾️他人を批判する時に、別の人間で例えるという無自覚な罪
アメリカ大統領選で、共和党の副大統領候補のヴァンス氏が、民主党のハリス副大統領のインタビューの受け答えを揶揄するため、二〇〇七年のミスコンの出場者の受け答えのビデオをxでの投稿に添付したところ、当時悩んで自殺しようとまで思いつめたという当該女性の抗議を受けて、投稿を削除するという事態があった。揶揄のイメージとして使われている女性が、生身の人間であり、有権者であるということが想像できなかったのである。
他人を批判する時に、別の人間で例えるということを私たちはしょっちゅうやっている。不注意で、揶揄すべきでない生身の人間を引き合いに出してしまうこともある。人間は完璧ではないので、そういう失態が起こるのはある意味致し方ないことだ。やってしまったら、謝罪するしかない。
しかし。いろんなイメージが物凄い勢いで増殖・流通し、多くの人がそれをリポストや引用の形で、無造作に利用しているネット社会では、他人を別の人を叩くネタにすることの罪悪感が薄れがちだ。本人を直接見たことがなくても、ネット上のイメージとしてしょっちゅう遭遇しているので、分かった気になれるからだ。ネット上のイメージは、引き合いに出されることに抵抗しない。そのため、ほとんどの場合、罪悪感を覚えないですむ。
政治家、ジャーナリスト、反差別闘争(をやっているつもり)の人など、無自覚の差別に最も注意すべき人たちまでが、イメージによる無自覚の差別に染まっている。
文:仲正昌樹